SILENT FILM LIVE【長編ウィーク】、9/24(金)は『カメラを持った男』を鳥飼りょうさんのピアノ生演奏付きで上映しました。撮影する男とその撮影したフィルムを映画館で観る観客とそれを私たちが観るという入れ子構造で、ロシアの「ある1日」を描き出します。冒頭でジガ・ヴェルトフ監督自身も宣言している通り、物語はなく登場人物も存在せず、演劇的なドラマから脱却し新たな映画言語の獲得を目的とする視覚実験なのです。と小難しいような前置きがされますが、作品を観るとカメラを通して新たな視覚を獲得した悦びに満ちていて、ただただ幸福な時間というのが驚きです。当時最先端の映像技術(多重露光やスローモーション、分割スクリーン、逆回転、ストップモーションアニメなど)を駆使した映像は観た人々を大いに驚かせたに違いありません。現代ではその技術に対する驚きこそありませんが、映像に焼き付いた「悦び」は100年近く経った今でも色褪せずに保存されていることに感動します。そしてこの映画ほど演奏者の“解釈”によりその色を変えてしまうものはないのではないでしょうか。鳥飼さんも映画から感じる「悦び」に焦点を当てて演奏していると話されます。また、DVDなどで見られる24コマではなく、16コマでの上映にしているそう。そのため上映時間は30分ほど長くなりますが、より作品の持つ「人間讃歌」的な部分が際立ちます。観ている間じゅう、嬉しさで胸がいっぱいになり自然と笑顔になってしまってました。素晴らしい映画、素晴らしい演奏で今回の企画は締めとなりました。鳥飼さん、本当にありがとうございました!