「イスラーム映画祭9」5/1(水) 『戦禍の下で』上映後、「我々は映像で闘う—2006年第二次レバノン戦争とレバノン映画人」と題して、アラブ映画研究者の佐野光子さんによるオンライントークを開催しました。
『戦禍の下で』は、第二次レバノン戦争=7月戦争の最中にカメラを持ち込み制作されました。俳優が演じる主人公2人が出会う人々は現地の人たちで、戦時のドキュメンタリー的側面もある作品です。
佐野さんは、レバノンで最も大きな私立大学であるセント・ジョセフ大学に勤務するため2006年1月からレバノン在住で、その半年後に7月戦争が勃発。7月12日に開戦し、現金を下ろそうと銀行に行くもATMが使えず、スーパーに行っても水やパンなどは無くなっており、バスやタクシー会社に連絡しても通じなかったことで「戦争に巻き込まれてしまったんだ」と実感を持ったそうです。数日後、レバノン軍と日本大使館の車に挟まれる形で車で移動し、シリアに脱出されました。
7月30日にイスラエル軍の空爆を受けた南部のカナ村で56人が死亡、そのうち37人が子どもであったことで国際社会から批判が高まり、約1ヶ月後の8月14日にイスラエル政府が国連の停戦決議を受諾し停戦となりました。相手を叩き潰すことができなかったこの時の悔恨が、今回のガザ侵攻についてハマスを徹底的に根絶やしにしようと攻撃を続けるイスラエルの態度に繋がっているのではないかと佐野さんは想像されます。
また、映画人による映像の“ムカーワマ(=抵抗)”として、本作のフィリップ・アラクティンジ監督の戦争に対する怒りと悲しみが表れたインタビューや、開戦前日にオープンしたアート系映画館「Metropolis」による避難民保護や子ども向けのプログラム上映、代表の「これもひとつの抵抗の手段」という言葉などを紹介されました。アート系NGOの「Beirut DC」のプロジェクトである世界へ向けたビデオレターと、「ベイルート・シネマ・デイズ06」で紹介されたアリー・シュリ監督による『Untitled』は実際に作品の映像を見せて解説され、彼らが感じた痛みが伝わる時間でした。
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