『モルエラニの霧の中』5/22(土)上映後、北海道の坪川拓史監督とZoomでつなぎ、リモート舞台挨拶を開催しました。坪川監督の作品は2013年に『ハーメルン』を上映して以来。その翌年から制作が始まった本作は、幾度も資金難で中断を余儀なくされながらも、長い時間をかけて室蘭のまちのひとたちと一緒に作っていかれました。不思議な響きの“モルエラニ”という言葉は、「小さな坂をおりた所」という意味のアイヌ語で、室蘭の地名の由来のひとつと言われているそうです。室蘭で生まれ、長万部で育ち、東京で21年暮らしたあとに親戚の家が空き一家で室蘭に移住された坪川監督。久しぶりの故郷は、記憶の中のものとは様変わりしていて驚いたと言います。素敵な佇まいの建物を舞台に脚本を書いたりしていたら、ある日その建物自体が取り壊されてなくなっている―そんな目まぐるしい状況で慌てて市にこのまちを舞台に映画を撮りたいと掛け合い、市民と一緒に作る映画プロジェクトが立ち上がりました。そんな“みんなでつくる”形を面白がってくれたのが大杉漣さんだったそうです。実はエピローグとして大杉さんと再撮影をする予定だったのが、それが叶わず亡くなられたことを残念がられていました。そして「今日はスペシャルゲストも連れてきました」と坪川監督、何かと思えばなんと留守電に収録された小松政夫さんの声を聴かせてくれました。なにげない短いメッセージながら、小松さんのイメージ通りのどこかユーモラスな語り口に胸が温かくなりました。