『こころの通訳者たち』12/4(日)の上映前に、シネマ・チュプキ・タバタの代表で本作のプロデューサーを務めた平塚千穂子さんによる「見えない映画鑑賞、聴こえない映画鑑賞を体験する」ワークショップが開催されました。

本作は、舞台手話通訳者の奮闘に迫る記録映画を、目の見えない人たちに届ける挑戦を映し出していますが、ワークショップでは映画の冒頭4分間を様々なパターンで鑑賞していきました。まずは「映画を耳でイメージする体験」として、映像なしの音だけが４分間流れました。この場合、無音の部分で不安を感じたり、冒頭の東京・三軒茶屋から、途中で場所が映っていることが理解しにくいと平塚さんは解説されました。ここに、音声ガイドをつけたものを４分間聞いてみると、冒頭には「シネマチュプキのロゴ」と解説。ナレーションが比較的多い本編ですが、そのセリフに被らないように言葉が入り、柔道練習中の難波創太さんが連れてきた盲導犬のピースがどこで待っているのかもわかります。また、タイトルバックに朝陽のシーンがあったり、愛知県豊橋市に場所が移ることも示されました。平塚さんは著書の「夢のユニバーサルシアター」（元町映画館でも販売中）でも、丁寧に音声ガイドの作り方について解説されていますが、音声ガイドがつくことで安心して聞けることや、言葉が多すぎても頭が追いつかないので、「いつも、ここで何を伝えなくてはいけないのかを取捨選択しています」と語られました。

次に「映画を目でイメージする体験」として、まずは音声なしの映像のみの冒頭4分間を鑑賞しました。先ほどと違い、舞台手話通訳者が、舞台の演者の横で演じるように手話をしているシーンが大きく映されています。「手話という表現は、ろう者にとっては第一言語で、映像を見ると、舞台手話通訳者の重要さがわかります」と平塚さん。最後の「ユニバーサル上映の体験」で映像に通常のセオリーで字幕を付けたものを４分間観てみると、舞台手話通訳者たちが訳した言葉だけが字幕になり、彼女たちの動きが伝えられていないことがよくわかります。本作の後半はこの動きを伝える音声ガイド作りをどうするのかを、目の見えない人、聞こえない人や手話通訳者を交えて、話し合っているシーンが多く登場しますが、そのように音声ガイドを作るプロセスを理解する上で、このワークショップ体験が参考になればと語られました。

この日は音声ガイドが聞けるラジオも用意いただき、誰でも映画を楽しめる環境を整えてくださった平塚さん（UDCast アプリに音声をダウンロードしてスマホでもご利用いただけます）。序盤に登場する記録映画記録映画『ようこそ 舞台手話通訳の世界へ』に、平塚さんをはじめとする音声ガイドづくりのメンバーたちがどのような、通常のセオリーを超えた字幕を作ったのか。ぜひ劇場で体感してください。