特集企画「映画で旅する世界」11/3(水・祝)『世紀の光』上映後、日本で唯一のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の研究者である中村紀彦さんにお越しいただき、トークを開催しました。本作は「多幸感に包まれる」という感想が散見されるものの、検閲によりフィルムがバラバラにされ、完全な形での上映が叶うまでに年月を要した作品でもあると中村さん。タイではどこにいても朝夕に必ず国家が流れ、起立し敬意を表さなければならないそうです。映画館でも本編の前に国王の素晴らしさを称える映像が流れます。そんな国民を制御するような慣習にアピチャッポン監督は疑問符を投げかけ、自身の作品の上映時にはそんな慣習を打ち消すような「私たちは自由だ」というメッセージが込められた独自の映像を必ずつけるそうです。習慣化して疑問を抱かなくなっていることに対して批判的な目線を持つ、そんな映画作家だと話されます。さらに、大学で学んだ建築の要素が映画作品にも現れているとも指摘。映画の構成じたいが建築的であったり、本作のような特異な二分割の構成にもそれが現れています。タイトルの「世紀」は「映画」を意味しているのではないかと中村さんは推察します。映画に対して私たちが「こうなるだろう」というある種の“お約束”や思い込みを突き崩し、決まり事をどんどん逸脱し、だからこそアピチャッポン監督の作品はどこまでも自由で、ある種難解で、誰にも真似できないものなのかもしれません。最後に2003年に制作された『アイアン・プッシーの大冒険』というB級映画の詰め合わせのような作品を紹介され、いかに捉えづらい監督なのかを話されました。
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