「アピチャッポン・イン・ザ・ウッズ2022」初日の7/16(土)、1回限りの限定上映プログラム『アピチャッポン本人が選ぶ短編集』上映後に日本で唯一のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の研究者である中村紀彦さんにお越しいただき、トークを開催しました。なんとこの日はアピチャッポン監督の誕生日でもあり、遠く神戸の地からお祝いの気持ちを念で送りました。アピチャッポン作品はわかりにくい、理解が難しいと言われることが多く、「その通り」だと中村さん。「ただ、短編を観ると長編作品の解像度が格段に上がる」と話されます。アピチャッポン監督は、そのフィルモグラフィーの大半が実は短編作品とインスタレーション作品。習作のように短編作品をいくつも作り、それらが積み上がってきたところで長編の輪郭ができていくという制作方法をする特異な作家なのです。長編を観るだけではアピチャッポン監督独自の表現要素を逃してしまうかもしれず、その元となった短編を観ることでわからないと思っていた作品の理解につながります。アピチャッポン監督の作品（あるいは政治）への姿勢を表す『国歌』や、マイノリティの声なき声や皮膚への強い関心を感じさせる『Mobile Men』、再生速度をコントロールすることで現在の〈倍速視聴〉に対する議論にも通じるものがある『Cactus River』などについて解説されました。