「イスラーム映画祭9」4/28(日)『ファルハ』上映後、「ホロコーストとナクバ —起源の暴力と暴力の起源」と題して、早稲田大学文学学術院教授の岡真理さんによるトークを開催しました。岡さんには2018年の「イスラーム映画祭3」で上映したパレスチナ映画『ラヤルの三千夜』以来、毎年本映画祭でトークをしていただいており、今回で7回目となります。
本作は、1948年にユダヤ人の国を作るために行われたイスラエルによるパレスチナ人の民族浄化“ナクバ”(=大災厄)をテーマにしています。監督は、パレスチナにルーツを持つヨルダン人のダリン・J・サラム。2016年から脚本を書き始め、5年がかりで完成させました。周囲からはナクバをテーマにするのは辞めた方が良いと忠告が絶えず、本作を配信しているNetflixにもイスラエルや親シオニストからの非難が多数寄せられているそうです。ナクバについては劇映画や小説で描かれず、悲劇が共有されてきませんでした。そのためか、現在のイスラエルによるパレスチナ人の虐殺においてもハマスを責める声や民族同士の紛争と捉える報道が絶えません。本作は問題の根源であるナクバを描いているという点と、パレスチナの映画はドキュメンタリーがほとんどで数少ない劇映画であることから「とても貴重な映画」と岡さん。また、娘と父の関係において、父(=家長)に抑圧される娘というステレオタイプを新しいフェミニスト的視点で書き換えられている点についても解説されました。
ナクバはなぜ起きねばならなかったのか。それはヨーロッパにおけるユダヤ人差別と植民地主義にあると岡さん。パレスチナ人は、ヨーロッパ、そしてドイツによる歴史的な反ユダヤ主義とホロコーストの罪をナクバ以来今日まで贖わされていると話されます。私たちが現在パレスチナで起きている虐殺について本気で解決を考えるなら、ナクバを問題にし、イスラエルの植民地主義を問わなければならないと強く訴えられました。
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