韓国映画『雪道』10/16(日)の上映後、大阪府公立中学校教師の平井美津子さんにお越しいただき、映画パブリシストの岸野令子さんを聞き手に、トークショーを開催しました。1997年、初めて中学校の歴史教科書全てに慰安婦の記述が載ったことで、子どもたちに堂々と慰安婦のことを教えることができると思い、以来25年間中学3年生の歴史の時間に慰安婦問題を教えてきた平井さん。『雪道』はフィクションですが、慰安婦だったことを名乗りでたソン・シンドさんやキム・ハクスンさんの人生に重なるといいます。チョンブンの風貌が平和の少女像に似ていることや、裕福な家の令嬢ヨンエは日本のために挺身隊に志願したにも関わらず、父が独立運動家であったことから慰安所に連行されたこと、ヨンエの死に際の言葉「みんなのことを忘れないで」に触れ、可哀想という感想で終わらせてはいけないと授業で子どもたちに伝えていることを紹介。岸野さんも「日本人のわたしたちがこの映画を観て何を感じ、わたしたちがすべきことは何なのかと思わざるを得ない」と問い続けることの大事さを語られました。

また、現代韓国での女性や子どもの貧困も描かれていたことに注目。最高裁で施設利用を認める司法判断が確定し、関西３カ所で公共施設での「表現の不自由展」が開催できたエピソードを当事者として語りながら、晩年のチョンブンが最後は闘う女性となったことに「理不尽なことがあれば、仲間と一緒に闘うことが大事」と力強く語られました。

慰安婦問題が教科書に表記されると同時に自民党右派議員らがネガティブキャンペーンを行ったため、一時はすべての教科書から削除。今も慰安婦の記述があるのは２社だけですが、「教科書になければ教えていけないということではない」と平井さん。一方、吹田市で先進的な性教育を行っていたところ、最終的には国会でオリジナル副読本が問題視され、副読本を回収する事態となり、今は人間の心が介在するとか、お互いの同意が必要だということが全く教えられない無味乾燥な性教育になってしまったと政治の教育への介入を指摘され、「本来なら人間が生きていく上で大切な行いであることを知った上で慰安婦問題を学んでほしいところを、性被害から教えざるを得ないことに忸怩たる想いがします」と教育現場での葛藤を明かしました。

この夏元町映画館で上映し、大ヒットを記録したドキュメンタリー映画『教育と愛国』に出演した理由に触れながら、SNSや匿名など外部からの圧力に負けず信念を貫くことに「ひるんでしまうと相手の思うツボで、もっと窮屈な世の中になります。そういう社会にさせないためにやっているだけなんです」と最後に語った平井さん。岸野さんも本作が公開まで時間がかかった理由を説明し、「他地域でもぜひ自主上映をしてほしい」と呼びかけました。