「イスラーム映画祭9」5/2(木) 『アユニ/私の目、愛しい人』上映後、「震災後のシリア北西部と14年目のシリア革命」と題して、アラビア語通訳/「イブラ・ワ・ハイト」発起人/NPO法人 Stand with syria Japan監事の山崎やよいさんによるオンライントークを開催しました。20年以上シリアのアレッポに在住し、大学で教鞭をとっていたという山崎さんは「シリアのことが忘れられていたタイミングで、(イスラーム映画祭の)藤本さんを通して観ていただくことができたのはとても意義のあること」と語ると同時に、自由と尊厳を求める人たちによる起こるべくして起きた革命だが、政府の弾圧はそれ以上で、どうしてそういうことができるのか憤慨していたと振り返られました。また、本作のアラビア語訳を担当された際、映画の中でアレッポ大学考古学科講師時代の学生で強制失踪の被害者、サマルさんの写真を見つけたのは運命的だったと、サマルさんの在学中のお話もしてくださいました。
映画に登場した強制失踪させられたパレスチナ系シリア人でソフトウェア開発者のバーセル・サファディとイタリア人神父パオロ・ダル・オグリオさんについて、山崎さんは生前の活動や、なぜ政権が目をつけるに至ったのかを解説、有能な人を排除・拷問し、恐怖を植え付けるアサド政権に厳しい指摘をされました。さらに「ISが悪の根源と考えるとシリア情勢を見誤る」と度々強調した山崎さん。シリア革命後、イスラーム主義者の中でも過激派を恩赦し、刑務所から解き放っていることを例に挙げ、アサド政権とISの利害が一致していることを問題視。メディアや我々も「暴力的な内戦」と決めつけるのではなく、ひとつずつ状況や意図を知ってほしいと訴えられました。
シリア北西部が非政権支配地域になっている理由や、その地域で2023年2月に起きた地震が人災でもあった理由を解説され、シリア革命の現在地や、Stand with syria Japanの支援活動についてもご紹介いただきました。最後に、バーセルさんのパートナーで人権派弁護士のヌーラ・ガジさんら被害者家族たちが粘り強く国際社会に訴えた結果、2023年国連で「シリアの行方不明者に関する独立機関」を作ることが決議されましたが、まだまだこれから表向きに報道される影でどんなことが行われているかに注視してほしいと力を込めました。「イスラーム映画祭9」パンフレットの山田一竹さん(NPO法人 Stand with syria Japan理事長/ジェノサイド研究)によるコラム「14年目のシリア革命」では、今回の上映にあたってのヌーラさんのコメントも掲載されています。こちらもぜひご覧ください。
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イブラ・ワ・ハイト(長引くシリア紛争で生活基盤のすべてを失いつつあるシリア人女性たちに『針と糸』で収入の道を開くプロジェクト。ハンドメイド製品をご購入いただけます)