「夏休みの映画館2022」4日目の8/2(火)、マレーシアよりヤスミン・アフマド監督の傑作青春映画『タレンタイム～優しい歌』を上映。ご来場いただいたみなさんには登場人物のプロフィールや人物相関図、マレーシアについて解説した鑑賞ノートをお渡ししました。上映後は2009年に急逝したアフマド監督作品をこよなく愛する俳優・監督・プロデューサーの杉野希妃さんと聞き手の映画研究者/早稲田大学・土田環さんによるトークを開催しました。

10年ぶりに『タレンタイム』をスクリーンで鑑賞し、まだ涙ぐんでいるという杉野さん。アフマド監督作品との出会いから、ロケハン、キャスティングまで行い、最新作となるはずだった『ワスレナグサ』に携わった経緯を説明してくださり、アフマド監督との出会いがプロデューサー人生の第一歩になったと語られました。

『タレンタイム』は生徒たちやその保護者、学校の先生と非常に登場人物が多い群像劇ですが、その中でも印象的なキャラクターとして杉野さんが挙げたのは、母を亡くしたばかりのハフィズの演奏を、二胡を弾きながら支えたカーホウ。撮影でカーホウ役の少年が泣きながら演奏したときに、アフマド監督が「あなたが泣いたら観客は泣けない。泣くのは観客」と感情を抑えた演技を求めたというエピソードも披露されました。

アフマド監督作品に共通する、国や人種、性別を超えて人は愛し合えるという信念は、普遍的なものだと杉野さん。「こんなに心がきれいで、真っ直ぐに自分の描きたいことが描ける人はなかなかいません」と作品の魅力と重なる監督自身の魅力に言及されました。

本作でアディバ先生役を演じたアディバ・ヌールさんが6月に亡くなられ、東京を皮切りに全国20館で追悼上映を開催中。杉野さんが次に観てほしいアフマド監督作として紹介された『細い目』も上映されます。ぜひ別の作品にも触れてみてください！