「夏休みの映画館2022」3日目の8/1(月)、ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラW主演の『キャロル』を上映。高校生のみなさんもご鑑賞くださいました。上映後には、本作を中・高校生にぜひ観てほしいとセレクトしたアンスティチュ・フランセ日本のプログラム主任、坂本安美さんによるミニレクチャー(リモート)を開催しました。
観客と一緒にスクリーンでご覧になったという坂本さんは「胸がいっぱい」と前置きしながら、写真家志望で彼氏もいながら、自分がどうしたらいいのかわからなかった若いテレーズにとっては何かを発見しようとするバケーションの物語であり、テレーズが模索する目線と共に観客が物語に惹き込まれると解説。『太陽がいっぱい』で知られるパトリシア・ハイスミス原作ですが、女性同士の恋愛が公に語られることのなかった1950年代では別名で発表せざるを得ず、大ヒットしたものの作者は長年謎に包まれていたそうです。
次に坂本さんは、本作のトッド・ヘインズ監督が撮影のエド・ラックマンさんとイメージを共有するために使用したイメージブックについて解説してくださいました。ソール・ライターやヴィヴィアン・マイヤーなどの写真から当時のニューヨークや女性たちの部屋での生活ぶりをリサーチ。16ミリフィルムで撮影することで、雪、雨、埃などの空気感や物質性を映像に映し出し、登場人物たちの感情も感じられるのです。
さらに映画における出会いについて、ジョン・フォードや濱口竜介作品(『寝ても覚めても』からピックアップし、解説してくださいました。その上で改めてテレーズとキャロルの出会いのシーンを見ると、その視線のやりとりが非常に重要なのがわかります。これから社会の偏見と闘わなければいけないながらも、揺るぎない愛を確信したふたり。坂本さんのレクチャーで作品の映画的な魅力とその背景がよりくっきりと浮かび上がる貴重な時間となりました。