特集企画「映画で旅する世界」初日の10/23(土)『オールド・ドッグ』上映後、映画監督の池谷薫さんによるトークを開催しました。ご自身でもチベットの焼身抗議を題材にしたドキュメンタリー『ルンタ』を制作された池谷さん。80年代にまで遡り、チベット人に助けられた経験やチベットとの関わりを話されました。チベットの苦しみをなんとか映画という形にしたい、ドキュメンタリーでは危険なので劇映画を作ってはどうかと考えていたときに映画祭で『オールド・ドッグ』と出会い、「こんな素晴らしい映画をチベット人が作れるなら自分には別の役割がある」と、ドキュメンタリーを制作されたそうです。ペマ・ツェテン監督が本作に込めた思いは“怒り”だと池谷さん。むごいラストのようですが、そこにも大きな意味があると話されます。風景を枠で切り取ったようなショットの閉塞感や、登場人物の視点の変化、音の効果、中国の〈ひとりっ子政策〉がチベットに落とす影など、作品を徹底解説されました。当然ながら本作も脚本段階から検閲されており、ストレートに中国を批判するような内容で完成させることは叶いません。そのため様々に比喩を使いその“怒り”を表現しています。それが日本人にはパッと見わからないため、なかなか一般公開されないとも話されました。こうして解説していただく機会などを重ねることで、その理解を広める一助となればと願います。