『すべて、至るところにある』公開初日の上映後、リム・カーワイ監督、出演のアデラ・ソーさんをお迎えしての舞台挨拶を開催しました。
友人と偶然関西に遊びに来ていたところリム監督から舞台挨拶に声がかかったというアデラさんは、「濱口竜介監督のファンなので元町映画館に来ることができて嬉しい」とご挨拶。リム監督のバルカン半島3部作の完結編ですが、過去作を見なくても楽しめるし、見ていたらより楽しめる作品になっています。2作目の『いつか、どこかで』(19)で主演を務めたアデラさんは、リム監督の脚本のないまま撮影直前にロケ地入りし、撮影10分前にセリフを渡される無茶ぶりに当初は戸惑っていたそうですが、今回は撮影2週間前に現地入りし、監督と一緒にロケハンを行ったことでそこで暮らしている人々の生活を知ることができ、演ずる上でも役立ったそうです。
劇中で映画監督のジェイ(尚玄)に「自分勝手だ」と怒るシーンがありますが、リム監督に対して怒りたいことはという質問にも、「リム監督の場合は演出、制作だけでなく、助監督の仕事も全部ひとりでやっています。レンタカーの手配や、食事のレストラン、宿泊場所を探しますし、それをやりながら我々をリードして映画を作りあげたことは素晴らしいです」と翻訳するリム監督が恥ずかしがるほどの絶賛ぶりでした。
またカフェでボスニアの実際の住民が語るシーンがあることについては、もともと映画の1シーンで使おうと交渉したカフェで話を聞くうちに、彼らに戦争体験があることを知り、「劇映画のシーンは全て撮り終わったけれど何かが足りないと思ったとき、もう一度戻って彼らの話を撮り、もっとたくさんの人に知ってほしいと思いました」とリム監督。「実際、彼らの語る言葉はセルビア語やボスニア語なのでほとんどわかりませんでしたが、リアルに戦争を体験した人の言葉は感情が伝わるし、聞いていたアデラさんはずっと泣いていました」と撮影の様子を明かしてくれました。サイン会ではウォン・カーウァイ監督作品と間違えて鑑賞したというお客様からも好評をいただき、「次に作るなら『枯れ葉』みたいな映画を作りたい」と意欲を見せておられました。