サイレント映画をピアノ即興演奏で愉しむ「SILENT FILM LIVE」。17回目となる今回は、“夏休み”らしくホラーや恐竜などをラインナップ。初日を飾ったのは、デンマークのベンヤミン・クリステンセン監督の『魔女』。悪魔や妖術、魔女裁判など、中世に遡る魔女の歴史を絵解きしていく異色作です。古い図版や特殊メイクをふんだんに使い、魔女と呼ばれた人々について、また悪魔について、そして魔女を弾圧する人々をリアルに描いていきます。歴史を紐解くような構成のため、音無しで観ると授業のようで退屈に感じてしまうかもしれませんが、鳥飼さんのピアノが素晴らしく、飽きさせません。中世の音階を用いながら、構成の性格分けを音でもわかるように表現したと話されます。大胆で革新的であるために当時の評価は二分され、北欧諸国以外では長らく上映禁止だったという本作。今観ると、やはり支配され抑圧されてきた女性たちの姿に心が痛みます。“社会の敵”役を弱者が引き受けさせられてしまうことは今でもあり、それがなぜ起きるのか、それにより誰が恩恵を受けているのかなどを考えさせられます。映画としての面白さも十分に持ち、また悪魔たちの造形も素晴らしく観ごたえのある作品です。