イスラーム映画祭6『私の娘の香り』5/7(金)の上映後、本映画祭主宰の藤本高之さんによる解説を行いました。本作の主人公のひとりベアトリスは、2016年の7/14に南仏ニースで84人もの命が奪われたテロ事件で家族を失いました。このテロ事件について、また本作では〈ISIS〉と称されていたIS（ISILとも。すべて同じ集団を指します）について、そしてトルコのアルメニア人コミュニティについて詳しく背景を解説され、ベアトリス、ヘヴィ、イブラヒムと中心の3人の人物から作品を読み解いていきました。特にイブラヒムが2013年にトルコで起きた爆弾テロで両親を失っていたという設定は、劇中では一切描かれず墓参りのシーンで映る墓碑から読み解けるという難易度の高いもので、それがわかると彼への理解が深まります。第一次世界大戦中に起きたオスマン・トルコによるアルメニア人虐殺の禍根はいまだ根深く残っており、これを題材にした映画（アトム・エゴヤン監督『アララトの聖母』、ファティ・アキン監督『消えた声が、その名を呼ぶ』、テリー・ジョージ監督『THE PROMISE／君への誓い』）の紹介も。本映画祭が初めて実施されたのは2015年12月で、そのちょうど1ヶ月前にパリ同時多発テロ事件が起きたという時期でした。そのため多くのメディアから取材を受けることとなり、映画祭は立ち見が出るほどの大盛況でしたが心中は複雑だったと藤本さん。2017年からは名古屋、神戸にも広げ3箇所での開催となり、今回も緊急事態宣言下にも関わらず多くの方に足を運んでいただいたことに感謝を述べられ、今年の映画祭最後のイベントを締めくくられました。