イスラーム映画祭6『シェヘラザードの日記』5/ 5(水)の上映後、アラブ映画研究者の佐野光子さんとZoomで繋ぎ、オンライントークを開催しました。本作のゼイナ・ダッカーシュ監督は麻薬患者のリハビリセンターに勤務後、言葉にしたいのにできない人たちを救うためにドラマセラピーを学び、2007年に〈NGOカタルシス〉を設立しました。本作もこのNGOが製作を担っています。レバノンに住んでいた佐野さんは、国民的な人気者であるゼイナ監督の大ファンだったと話します。本作の舞台となったバアブダ女性刑務所は、有罪判決を受けた受刑者とまだ有罪が確定していない、裁判が始まっていない未決勾留者とが混在していて驚かされます。国内で刑務所にいる人の半数以上は未決勾留者だという報告もあり、また刑期が終わっているのに拘留され続けたケースも。レバノンの司法制度の抱える問題を指摘されました。そして〈シェヘラザード〉という「千夜一夜物語」に登場するキャラクターと、そのタイトルに込められた思いを解説されました。後半は「これが言いたくて今日は横浜からオンラインでお邪魔したんです！」と佐野さんの熱がさらに高まるテーマ、レバノンのDV問題とDV防止法について話されました。2014年1～2月に女性が家族に殺される事件が相次ぎ、3月にDV防止法を求めるデモが行われ、翌4月にDV防止法が成立したものの、専門家らから抜け穴を指摘されており、実効性については懐疑的だそうです。さらにレバノンには家族法がなく、家族の問題についてはそれぞれの宗教法廷で問われることになり、そうなると家父長制的価値観や男性優位的思想により女性が圧倒的不利になります。本作を観た後にこの事実を知ると無力感でいっぱいになると話されながらも、最後は希望の話題をとそんな世界と闘う女たちを紹介して締められました。