『人形たち~Dear Dolls』『Bird Woman』公開3日目の上映後は、前日に引き続き、大原とき緒監督、海上ミサコ監督をお迎えしての舞台挨拶を開催しました。
『Bird Woman』は釜山国際映画祭の短編企画コンテストの最終選考に残り、惜しくも助成金を得ることができなかったものの、今、作るべき映画であることを実感したという大原監督。コロナ禍で映画のみならず全ての業界が打撃を受けている中で、本当に映画を作ってもいいのかを問うため、目標が達成しなければ支援金はゼロとなるクラウドファンディングにチャレンジ。見事、目標達成に至り、制作を始めたそうです。ワールドプレミアとなった韓国のプチョン国際ファンタスティック映画祭では、観客から「この映画を作ってくれてありがとう」「勇気をもらいました!」と声があがる一方、日本では痴漢されても声をあげないのかという質問があったそうです。またこの4月、ブエノスアイレス国際インディペンデント映画祭に参加した際は、「この映画が撮られたことで、日本で(痴漢に対する)政策が作られたのか」という質問があり、映画が社会問題を糾弾する上で、とても観客にとってビビッドなものである印象を受けといいます。
前作、『夢幻紳士 人形地獄』で少女と人形という掛け合わせをやりきったという海上監督。今回も人形がモチーフになっていますが、「人形だって自由になりたがっているし、そういう人形を観た観客のみなさんが楽しんでくださればと思って。(ウエスタン調なのは)レオーネを意識しました」とその狙いを明かしました。『Bird Woman』同様にハラスメントに対して声を上げる物語でもありますが、被害を受けた当事者だけでなく、当事者の周りにいる人たちがどうすればいいかを考えたといいます。演出の意図を理解してくれる前作のキャストに加え、18歳ぐらいでないと成立しない、投げ縄で相手を懲らしめようとするキャラクターを演じた奥野みゆさんも注目印の俳優だそうです。
『Bird Woman』と同じオランダ人の脚本家に書いてもらった『Doll Woman』の脚本を最初に読んだときは戸惑ったという大原監督。ただコロナ禍で突然雇い止めに遭い、路上をさまよう若い女性のホームレスが急増したこと、監督自身も同じ体験をし他人事ではないと思ったことを伝える中で生まれた物語であり、辛い状況でも主人公はイキイキと逞しく描いている女性をカラフルに、サイレント映画のように描いたと狙いを明かしました。『JOMON わたしのヴィーナス』西川監督のお嬢さんもあるシーンで撮影に参加されたそうで、次世代とのコラボレーションが行われた微笑ましいエピソードも披露してくださいました。
今回、4人で上映活動を行い、とても学びが多かったという大原監督と海上監督。フォトセッションやサイン会も映画同様アツく盛り上がりました。これからもこのような女性たちの声を様々な表現で見せていく作品が増え、劇場で上映できることを願っています。