『ある職場』初日の2/18(土)上映後、映画・映像研究者の中村紀彦さんに進行・ファシリテーターを務めていただき、舩橋淳監督と主演の平井早紀さんをお迎えしてティーチインを開催しました。舩橋監督は、ニューヨーク在住時に映画制作を始めたが日本に戻って強く感じたのが「ジェンダー不平等」だったと話します。2016年にあるホテルチェーンで起きたセクハラ事件を取材し、「セクハラは本当に辛かったが、それと同様かそれ以上にその後の会社生活が辛い」という被害者の言葉を聞いて、“後日談”を映画化したのが本作。男性である自分が監督して良いのかと悩み抜いた末に、〈台本は書かず場所とキャラクター設定だけ作り、話す順も決めずにキャラクター自身から出てくる言葉でドラマを進める〉という特異な手法を選択されました。被害者であり役名（＝早紀）がご自身の名前と同じということもあり、「とても苦しい現場でした」と平井さん。ご自身の経験から出る言葉だけでは軽く薄いと感じ、様々な文献や映像資料にあたって想像力を膨らませて役作りをした結果、議論では「勝手に言葉が出てくる」状態だったそうです。「ホテル関係者以外の人物が場をかき混ぜることにはらわたが煮えくりかえる思いだった」という中村さんのご感想に、「無関係な者による誹謗中傷の飛び交うネット空間を象徴する存在として配した」と舩橋監督。客席からの、なぜ彼女は旅行に行ったのかという疑問や、人に寄り添うことの難しさも感じたというご意見などにもひとつひとつ丁寧に答えていかれました。日本の男性は共感力が弱いことを指摘され、他者への想像力を持ちたいと舩橋監督は話され、どうか自分を第三者の位置に置かずに、自分ごととして捉えてみてほしいと平井さんも切実に訴えられました。