
『飛べない天使』3/16(日)の上映後に、堀井綾香監督の舞台挨拶を開催しました。
本作は、都会の喧騒に疲れた女性と孤独を抱える青年が、束の間の逃避行を通じて心を解きほぐし、自分を取り戻していく姿を描いたファンタジードラマです。本作の企画がスタートしたのは約2年半前。堀井監督は「当時、コロナ禍による閉塞感の中で、『逃げたっていいじゃん』という思いを作品に込めたかった」と振り返ります。監督ご自身も「自分には何の価値もないのではないか」と感じることがあったといい、そうした不安ややるせなさを抱える人々に向けて「選択肢は無限にある」「どこにだって行ける」というメッセージを届けたいと考えたそうです。苦しい思いを抱える方々の心が少しでも軽くなることを願って制作されたとのことでした。
ロケ地には静岡県伊東市が選ばれました。堀井監督はロケハンで訪れた際、「幻想的な雰囲気を持つ町並みに魅了されました。特に、夜の商店街の人の少なさは本当に夢の中みたいで。ここを物語の出発点にしようと決めました」と語ります。また、伊東市の海の美しさも印象的で、キラキラと光る水面や海鳥、夕焼けの海辺は現実離れしたノスタルジックな雰囲気を生み出すことに寄与しています。
キャスティングについては、主人公・優佳役には福地桃子さんを起用。「芯の強さとふわっとした雰囲気のバランスに惹かれました」と堀井監督は語ります。一方、聡太郎役の青木柚さんについては「過去の作品では内面の葛藤を抱えた役が多かったのですが、彼のチャーミングな一面にも注目しました」と話し、お二人の持つ自然な一体感が作品の魅力を支えていると述べられました。
また、本作は単なるロードムービーではなく、現実と夢の境界が曖昧に描かれている点も特徴的です。堀井監督は「商店街での出会いは現実、その後二人が目を閉じてからは夢の旅。どう受け取るかはお任せしたいですが、私の中では、二人は同じ夢を見て同じ時間を過ごしてお互いに影響し合い、現実に戻ってくる」と説明されました。夢の時間が現実に影響を与えるという点が重要なテーマとなっており、二人の出会いによる心の変化が丁寧に描かれています。「見る人の解釈を尊重し、余白を残しています」と監督は語られ、本作が観る人にとって自由な解釈の余地のある作品であることを強調されました。
「どこへでも行ける」という感覚そのものを描いた本作は、単なる現実逃避ではなく、「逃げ出してしまいたい」という気持ちをそっと受け止め、肯定してくれるような作品です。夢と現実の交錯する物語は、観る人それぞれの心に寄り添い、新たな一歩を踏み出すきっかけを与えてくれるはずです。















