
『天使の集まる島』9月13日(日)の上映後に、堀井綾香監督の舞台挨拶を開催しました。
本作は、病院で療養生活を送る青年が目を閉じた先で異国の島を旅し、そこで出会う人々との交流を通して新たな感情に触れていく物語。現実と空想が交錯する中で、孤独な心が少しずつ変化していく様子を描いています。元町映画館では今年3月に上映した『飛べない天使』という作品の前日譚にあたります。
堀井監督は、まず企画の経緯について語られ、「2023年末に『飛べない天使』を下北沢で限定公開した際に、予想以上の反響をいただき、『二人のことをもっと知りたい』という声が多く寄せられました。その声に背中を押されるかたちで、本作を構想しました」と述べました。前作で青木柚さんが演じた人物像をさらに掘り下げたいという意欲が、今回の制作に直結したそうです。
舞台にマレーシア・ペナン島を選んだ理由について、監督は「ジョージタウンは世界遺産にも登録され、多様な人種や文化が共存している街です。歩くだけで景観や雰囲気が変わり、世界を凝縮したような説得力を感じました」と語りました。病院という閉ざされた空間と、鮮やかで多様性に満ちた街の対比が、聡太郎の心象と重なり、物語に力を与えています。
キャスティングについては、ミミ役を務めたさとうほなみさんの存在を「少女のような儚さ、少年のような奔放さ、そして愛を知る女性の深みまで、多様な表情を1人の人物に宿せる方にお願いしたかった」と振り返られました。現実にそこにいるかのようでありながら、同時に虚構性を帯びた佇まいで、その映画的な存在感が存分に発揮されていたキャスティングです。
また、『飛べない天使』と『天使の集まる島』の2作を通して、青木柚さんの立ち位置の変化についても触れられました。『飛べない天使』では青木さんが自由そのものを担っていましたが、今回はさとうさん演じる存在に振り回される側に立っています。「自由であることと、自由に翻弄されること。その両方の感覚は私自身の中にも常にあります。それは、悩んだり苦しんだりしたときに『もっと自分勝手にしていい』という選択ができるためのものでもある。そういう切り札を持っているだけで日常が軽やかに生きられると思います」と語られました。
トークはさらに“人が抱えている普遍的な孤独”へと及びました。監督は「人は誰もが孤独を抱えていますが、同時に誰かに影響を与える力を必ず持っていると思います」と述べ、その力のあり方について「誰かが困っているときに、その人がちょっとでも心が軽くなるような言葉をかけてあげられる人になりたい。天使って、そういう存在のことです」と語られました。天使とは特別な奇跡を起こす存在ではなく、孤独を前提としながらも他者に寄り添い、ささやかな救いをもたらす者だということ。堀井監督は、そのようなひそやかで揺るぎない存在の力を真摯にまなざしており、だからこそ、本作全体が温もりと優しさに満ちた希望として立ち上がっていることを実感しました。

