韓国芸能界を揺るがせたK―POPアイドルの性加害事件を背景に、「推し」が犯罪者になってしまったファンの人々にスポットを当てたドキュメンタリー『成功したオタク』の公開を記念し、SKE48の元メンバーで、現在はタレント・映画コメンテーターとして活動されている加藤るみさんをお迎えしてのトークイベントを開催しました。
本作を、「ファンの人の熱い想いが伝わるシスターフット映画」と評した加藤さん。一方、アイドルオタクの石田(編成担当)は「推しが加害者になり、自分が加害者だったかもしれないというオ・セヨン監督の個人的な思いから作られたので、自分も監督の目線に寄り添って見てしまう。推し活やオタクとしての振る舞いを考えていかないといけない」とコメント。実際に加藤さんもアイドル時代は毎週末握手会を行い、ファンとコミュニケーションを取られていたそうで、加藤さんにとってファンは「私の夢を応援してくれる存在。私が喜ぶことを考えてくれている」存在であると同時に、アイドルをやめ、結婚したらファンが離れてしまったこと、それでも応援してくれたり、イベントに出ると喜んでくれるファンがいることに喜びを感じていると話されました。
そんな加藤さんがアイドル時代に大事にしていたのは「ファンの人に対して絶対に誠実でいること。お金を払ってステージを見にきてもらうという自覚を持って活動していました」。そしてもう一つは運営側から提示された「恋愛禁止」。不条理ではあるけれど、ファンのみなさんはアイドルに疑似恋愛で応援してくれているので、そこだけは守らないといけないという意識があったと振り返られました。また、劇中で登場する「影響のある人たちが持つ責任感」というセリフに、イメージの押し付けではないかと石田が問題提起をすると、加藤さんは「アイドルは人間なんだという気持ちを持っていただいた方がいい。理想を抱きすぎないというのは応援する上で、メンタルを保つために大事なのかもしれません」とファンの心理を慮りました。
一目見るだけですごいと神聖化されてきた80年代アイドルから、CDを買えば握手ができる会える平成のアイドル、接触が制限されたコロナ禍を経て、今はよりファンの熱量が直接伝わる地下アイドルを含め、アイドルの訴求の仕方も多様化してきていますが、加藤さんは最後に劇中の監督の言葉を引用し、「オ・セヨン監督はこの映画を作ったことで、再び“成功したオタク(ソンドク)”になったのではないでしょうか。推しと適切な距離を取ることが大事だと言っていましたがそれが一番です。一方で、ファンをどういう気持ちにさせるのかというアイドル側システムの構造上の問題もあるでしょう」と推されるアイドル側からの視点で、映画が提示した問題を深掘りしていただきました。1時間みっちり、ここだけの話も含めて加藤さんに語っていただいたスペシャルトークとなりました。