
1/25(土)から当館で始まった韓国映画『地獄でも大丈夫』はいじめに悩まされて自殺をしようとして失敗し、復讐のための修学旅行を企てる女子高生二人のロードムービーで、公開二日目に神戸松蔭女子学院大学の金智英(キム・チヨン)先生をお迎えしてトークイベントを開催しました。キム先生には一昨年『AFTER ME TOO』という韓国映画で生徒達と発表会イベントをしていただき、その時の日本と韓国の比較対照など素晴らしい内容でした。今回は生徒達の世代が主人公の韓国映画をどうご覧になるかお聞きしたくお招きしました。
参加されたお客様の映画を観たばかりの感想は「思ってたより地獄でどんどん大変になって。。でもだからこそ最後が良かった」「もし私なら無理かも。音楽があまり使われてないけど、たまに使われている音楽が効果的。状況は大変なのにハッピーな感じもした」。今回トークの場所を2階待合ロビーにしたことで広い劇場内よりも双方向なやり取りができたのは良かったです。韓国のドラマ、映画、文化に関心のあるお客様へ向けてキム先生とMCのスタッフが本作に即して話を広げていきました。キム先生は初めに映画の原題(チオンマンセ)の意味を話されました。日本語に直訳すると「地獄万歳」、「地獄上等」というニュアンスです。それと関連するネットスラングに「ヘルチョソン」があります。これは「地獄のような朝鮮」を意味して、2000年代後半に若者が直面する受験戦争、就職難、経済格差などの暗い現実を封建制の朝鮮時代になぞらえて流行語になりました。また金のスプーンというネットスラングは、日本では「親ガチャ」に相当し、自分の力ではどうしようもない暗い現実を指します。関連の韓国のドラマ、映画として「他人は地獄だ」があります。
どうも韓国の映画、ドラマは日本よりもっと時代を映し出す傾向にあるでしょうか。次は本作を表す二つのキーワード「いじめ」「カルト宗教」について詳しく解説していただきました。
キム先生によれば、日本語の「いじめ」という言葉に相当する韓国語がなく、この日本語を輸入したりもしたそうですが、韓国では「学校暴力、略して学暴」と言います。この暴力には物理的なものから精神的なもの、オンラインを使ってのものなどがあります。いじめへの復讐ということでは、過去にいじめをしていた有名人などが告発されることが日本よりも多いのは、例えば兵役義務を特権階級が逃れたりすることへの怒りも起因してるかもしれません。関連のドラマに「ザ・グローリー」「甘くない女たち」があります。
もう一つの「カルト宗教」については、本作を観た日本人なら劇中のカルト宗教はかなりシリアスに受けとめると思うけども、キム先生は特に意外な印象は受けなかったそうです。韓国語にも「カルト」という言葉はあるけども、日本のカルトとは違ってオカルトという意味になります。韓国では、似而非(サイビ)宗教と言います。偽りの、エセの宗教ということですね。そういう宗教が広まる背景として大きなことでは、1997 年のIMF通貨危機で国家が破綻しかける暗い現実と向き合ったこともあり宗教に救いを求めてしまうのでしょうか。韓国にはあの統一教会もあります。日本との違いで興味深いのは、韓国では政治や宗教の話題は特にNGではありません。関連するドラマでは「地獄が呼んでいる」、映画「サバハ」があります。
本作『地獄でも大丈夫』の素晴らしいところは二人だけの「修学旅行」での度重なる苦難(いじめ、自殺失敗、いじめへの復讐の挫折)を通じて旅行から帰ってきても変わらないつらい地獄のような現実に対して大丈夫と言えるようになる、それは現実、環境は変わらないけども「私(たち)」が変わったということです。まだまだトークは続いたのですが長くなるので最後に二つの映画を紹介してレポートを終わりにします。キム先生オススメの映画『あしたの少女』、『地獄でも大丈夫』のイム・オジョン監督がとても影響を受けた映画『子猫をお願い』。『子猫をお願い』は3月に当館のオリジナル特集(近日発表)で上映する予定です。
(高橋勲)
トーク内で紹介したドラマ・映画
◉韓国の若者
・ドラマ『ミセン』(2014)
・ドラマ『他人は地獄だ』(2019)
・ドラマ『私の解放日誌』(2022)
◉韓国の「校内暴力」
・ドラマ『ザ・グローリー』(2022)
◉韓国の「カルト宗教」
・ドラマ『地獄が呼んでいる』(2021)
・ドラマ『君を守りたい ~SAVE ME~』(2017)
・映画『サバハ』(2019)
◉韓国の女性の物語、シスターフッド作品
・ドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』(2018)
・ドラマ『恋愛体質~30歳になれば大丈夫』(2019)
・映画『ミスにんじん』(2008)
・映画『サムジンカンパニー1995』(2021)
・映画『ソウルメイト』(2023)















