
『次元を超える』11月1日(土)の上映後に、豊田利晃監督の舞台挨拶を開催しました。
本作は、豊田監督が近年取り組んできた「狼蘇山」シリーズの延長線上にありながら、新たな領域へ踏み出した意欲作。修験から成る個の内面世界を主題に据え、監督の実体験をもとにした超越の物語が描かれます。
舞台挨拶のトークテーマは「豊田利晃は何を超えたのか」。まず、制作の源泉が修験道での経験にあると明かした監督は「密教の教えは宇宙と通じている。そんな感覚を映画でどう表現できるかずっと考えていました」と述べ、自らの精神的体験を作品へ転化する過程を振り返られました。「外側の宇宙を描くのではなく、内面を掘り下げていくような作品に感じた」という司会者の指摘には、「SFは子どものころからずっと憧れがありました。今、大きな物語をつくろうと思ったら、自分の中に潜っていくしかない」と応じた豊田監督。本作のSF性は人の心の奥にある原始的な宇宙を描くことにあります。
また、近年の豊田作品における自主制作の姿勢については「自主映画は何をやっても許されます。キャストもスタッフも、みんな自分の意志で関わってくれる。その自由さの中にしか、いま撮りたい映画は存在しない」と語ります。キャスティングについては、長年付き合いのある豊田組の俳優陣に直接声をかけたそうで「窪塚(洋介)と松田(龍平)でやりたいと思って、すぐに連絡しました。友達だから出るわけじゃない。脚本を読んで『やりたい』と思ってもらえなければ意味がない。でも2人ともノリノリで出てくれました」と述べ、監督と俳優陣の信頼関係が作品の密度を高めているのが窺えました。
本作の特徴のひとつである音響設計については「映画館で観ないと意味がない音を作っている」と語り、邦画初のドルビーアトモスでの制作について紹介されました。各映画館で音圧を2デシベル上げるよう指定する徹底ぶりは、映画を視覚の芸術から感覚体験へと拡張しようとする豊田作品の核心を体現しています。
本作『次元を超える』は、修験と祈りのあいだを往還しながら、自己の中にしか広がらない壮大な空間を可視化する実験的体感映画です。映画の余白を「観客が物語をつくるための空間」として開いた豊田監督の姿勢に、本作が放つ圧倒的な力強さの理由を見た気がします。元町映画館では、11/14(金)まで上映中。映画館でしか体験できない映像と音響の宇宙を、どうか全身で浴びてください。
ともに次元を超えましょう。
















