
楽士の鳥飼りょうさんをお迎えして年4回開催する「SILENT FILM LIVE」、【シリーズ28】の今回は俳優ロン・チェイニー(1883~1930)特集です。
彼は『オペラの怪人』(1925年)、『ノートルダムのせむし男』(1923年)で有名ですが、いずれも特殊メイクを施した怪異な役どころでした。『天罰』(1920)はそんな彼の素顔の演技を楽しむことができる作品です。
鳥飼さんとのミニトークの相手はアピチャッポン・ウィーラセタクンの研究者である中村紀彦さん。中村さんらしい視点から『天罰』という作品を掘り下げていただきました。
鑑賞後の感想として1920年に製作されたとは思えないほど、映画として成熟した表現や技法が繰り返し使われておりびっくりしたと中村さん。両脚を切断された主人公であることを意識させるべくカメラは足元が含まれるショットが多用されていたり、クロスカッティングで交互の視点の切り替えが自然にできている。
今回の3本でもそうですが、ロン・チェイニーは社会の底辺や闇で差別される者たちを演じることが多く、この『天罰』は顔の特殊メイクはないものの、両脚を切断された主人公を不自然に両足を後ろに折り曲げた激痛に耐え演じています。
鳥飼さんいわく、ロン・チェイニーは両親が耳の聞こえない環境で育ったことから、身体的に障害がある社会的弱者への思いがずっとあるのではないか、それが彼の演技や映画への関わり方に影響を及ぼしており、例えば『ノートルダムのせむし男』はチェイニーの持ち込み企画と言って良く、クレジットはされていないがプロデューサー兼主役でもあるそう。
それから残念なことですが、ロン・チェイニーの出演作はその多くがロストフィルムとなっており、もう観ることができないそうです。サイレント時代(1895~1927頃)は映画のフィルムを記録アーカイブとして保管、保存するという意識がほとんどなく、消耗したフィルムはそのまま損失していく運命にありました。特に日本では高温多湿という環境から永久に失われたフィルムは多いとのこと。
11/1『オペラの怪人』、11/2『ノートルダムのせむし男』、11/3『天罰』と全3作の1周目が終了しましたが、11/4から2周目+最終日『オペラの怪人』を予定しています。
ロストフィルムからまぬがれてデジタル保管された100年前の名作をどうぞご覧ください!
(高橋)















