
兵庫県立美術館で12/22まで開催中の「富野由悠季の世界」。この展覧会の開催を記念して現在、関西の7つの会場で富野由悠季監督作品のリレー上映を実施中。当館では1988年公開の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を11/8まで上映します。上映記念として、初日の11月2日に、富野由悠季総監督による舞台挨拶を開催しました。
当日は満席のお客様を前に貴重なお話をしていただきました。富野作品の大ファンでもある司会者から上映前の注意事項が終わると普通のファンになった気持ちで「歴史の目撃者になりますよ」と開催宣言。そして富野監督が登壇後の開口一番「こんな78歳の年寄りが出てきたくらいでニヤニヤするな。」とご指摘が‼続けて「本日は呼んでいただきありがとうございます。途中で帰っても叱りませんので無理をせずお付き合いください(笑)」。と会場に集まったファンとの場を温めて頂きました。
いきなりの富野監督のお言葉に緊張した司会者は興奮もあり、まさかの足をつるというアクシンデントを挟みつつ、いよいよ舞台挨拶スタート。
【Q】「元町映画館のような劇場のことをどう思いますか」
「実は昨日(11/1)、ここへ下見に来て映画も観せてもらいました。このサイズとスクリーンの大きさは、一番後ろからでもよく観えます。お世辞でもなく、上手に作ってある印象を受けました。その映画館でこういう司会者のような人がいないと、こういう上映をすることもないので、やれやれ…と同時に嬉しくも思います」との言葉に、司会者はおそらく心の中でガッツポーズしていたでしょう。
【Q】「監督から観て本作のどの部分が一番好きなカット/シーンでしょうか」
「ある訳ないでしょ? というのも、映画で“あの1シーン”が良かったと言われたら終わりなんです。“観て良かった”…これが最大評価であって、それ以外は「映画を観たこと」になりません。嫌味でもなんでもなくて、本作の欠点をあげるなら、ラストシーンをあの形でしか作ることができなかったのが自分の力量がなかったというしかないですね。」さらに「最後の光のところは、88年当時、まだ現在のようなデジタル技術のレベルではありませんから、光の撮影の素材づくりで、黒い紙に針で穴をあける作業を自分でやっていました。だって誰もやってくれる人いないから。もっと光の粒を作りたかったけど、もうやだなぁって思ったからああいう風になりました。」というエピソードも飛び出しました。
司会者が本作を初めて観たのは高校生の時。その時は漠然と「カッコ良い作品。でも何をやっていたのか分からない」という感想で、それを聞いた監督は「目の前の映像に囚われていると次のシーンが見えてこないんです。映画って多角的にみることができるものなんですよ。自画自賛なんですが『逆シャア』は10年前から自分の作品として見ていません。作品として独立しているので、途中から観ても最後まで観てしまいます。優れた映画ではないですが映画として観られるという印象はありますね。」と答えてくれました。
【Q】『逆シャア』はどのような気持ちで世の中に送り出したのですか。
「88年という時代と照らし合わせて映画の説明はできないですね。ただ、70歳を過ぎて思うのは、自分の作品が時代に影響を受けているのは事実だと思います。作り手の気分で観ると自分の作ったキャラたちが狂っているんじゃないかと批判的に思うこともあります。でも、僕は解説者じゃないからこう答えざるをえません。“アニメを作っていますが、世の中と違う世界で制作している訳じゃないことを承知しておいてほしい”ということです」
【Q】富野監督作品に出てくる女性キャラクターのセリフは共感することが多く不思議です。どのように考えているのですか。
「まず前提で人間は生物学的に男女、両方の要素を持っていると言われています。時期は定かじゃないですが僕も自分の“女性性”を意識していた時期がありました。」と、人が本来持っている男性性、女性性にふれたところで、そういう部分がシナリオを書く時に大いに役に立ったという経験談を話されました。「だから最近のアニメ作品に出てくる女性は大嫌いです。そういう作品を見ると、ずっと女性を追いかけていた人が作ったんだろうなって“邪推して”しまいます。」
この言葉に客席からは感嘆の声があがりました。
【Q】私(質問者)は『逆シャア』で好きなキャラはハサウェイですが、現実の人を模写したキャラクターなんでしょうか。
「ハサウェイのモデルはいません。でも深刻に考えました。概ねファンに知られているブライトさんとミライさんの子供ということで、両親があの二人だと偏屈にも、向上心を持った子どもになるかもしれない。ファーザーコンプレックス、マザーコンプレックス、あるいは両方を持った人物になっていたかもしれない。でも『逆シャア』に登場させてしまったおかげで『閃光のハサウェイ』というノベルティを僕は書くことができたと思っています。」
一旦ここでお客様からの質問コーナーは終了し、司会者からの質問を富野監督へ。
【Q】トークイベントなどで「次世代につなぐ、教育」という言葉をよく使われますが、本作も意識されましたか。v
「『逆シャア』が世間にどのような影響を与えるかを考えたことはありません。普通の映画として影響力を持った作品を作ってみたいという願いがあったからこそ“ガンダム”になりきらない『逆シャア』が生まれたんだなと思います。」
続けて司会からの質問で「アムロとシャア、ハサウェイやクェス、ナナイと…」と緊張のあまり言葉が詰まるシーンで、監督から「そういう言葉が出てきたらチェーン・アギしかいないよ。キャラクターとして成功したチェーン・アギを言ってほしいんだよね、ちゃんと。」と笑顔で答えを導いてくれました。
最後に監督は「今日のように、みなさんがいらっしゃらないとこういう場所に呼んでもらえません。こういう世界ですから僕もいついなくなるか。覚悟はしています。今日は本当に光栄です。みなさんのおかげでこれからまた20、30年も『逆シャア』は生き残りますね。嬉しいです」という言葉で締めくくられました。
『無敵超人ザンボット3』や『機動戦士ガンダム』『ブレンパワード』など影響力のある作品を数々世の中に発信してきた富野監督。それらの作品を作ってこられた富野監督との30分という時間はあっと言う間でした。当館で映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』を上映できたことは本当にスタッフ冥利に尽きます。そして最後に書いていただいたサイン帳の言葉「逆襲のシャア 復活」。まさに「BEYOND THE TIME」。何十年先でも本作を観続けます。富野由悠季監督、本当にありがとうございました。
【補足】
集合写真の撮影時に展示グッズのうちわを持っているファンに対して「あのさ、そんなことは大人がやることじゃないよ」と笑いながらお話する富野監督、舞台上でもプロでした。
(芋羊甘)













