
『革命する大地』公開初日となる6/15(土)の上映後、中沢知史さん(ラテンアメリカ政治社会史研究/立命館大学講師)によるトークショーを開催しました。
2017年から3年間ペルーに在住し、大使館でペルーの政治情勢を調べる研究員として働いていたという中沢さん。ペルーでは農地改革50周年のタイミングで、通常ハリウッド映画を上映するシネコンで上映され、満席で入れなかったと現地での反響ぶりや、現在の政治に不満を感じている若い世代に刺さったと「接収」という言葉を使ったネットミームまで流行った例を紹介されました。
そんな中沢さんは長期的な背景として、西洋による征服の歴史や植民地主義、人種主義を挙げ、「スペインの植民地支配の拠点だったペルーの首都リマで、かつて囲っていた城壁はなくなったものの、心理的な壁は取り払われたのかが大きな映画の背景」と前提を提示。さらに、1821年にスペインから独立し、形の上で共和国になったペルーで、逆に一部の白人系エリートによる寡頭支配が強まったことや、農民先住民の隷属状況が1960年代まで続いていたことの触れました。
土地問題については20世紀初頭から議論をされてきたものの文民政府では問題を認識しながら、ほぼ半世紀の間解決策を見いだせなかったことが重要と指摘。「完全に政治が麻痺していた時代において、共産主義革命が起きる前に、自分たちで土地問題を解決すべく登場したのがベラスコであるという流れを押さえておくことが大事」と強調されました。他国の軍政とは一線を画した改革派軍政についてペルーではいまだに是々非々の議論をしているそうですが、政治や経済の改革というより、社会の民主化や文化の革命が行われた点に注目し、「マグマのようにたまっていた表現の意欲を改革で解放した。同時代のパリにおける5月革命と並列にみると面白いのではないか」と別の視点をご提示。
農地改革が終わったあとの後日談として、アシエンダが解体されたことで逆に土地の寡占が進んだことや、80年にようやくスペイン語の識字要件を撤廃した普通選挙が実施され、完全民主主義が実現したこと、農村でセンデロ・ルミノによるゲリラ活動が活発化し、ペルーの政治史に暗い影を落としたことを紹介いただきました。ペルーの近代史を一気に振り返った本作について「何度でもご覧いだきたい」と力を込めた中沢さんのトークで、情報量の多い本作の背景や前提として知っておきたいことを掴んでいただけたのではないでしょうか。歴代ペルー映画のフッテージを豊富に使用し、映画表現的にも見所十分な本作、ペルー先住民の苦難の歴史に、今こそ触れてください。
















