
昨年春のロードショー以来のアンコール上映となった南インド映画『響け!情熱のムリダンガム』、9/2の上映後に池亀彩さん(京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科教授)と本作配給の稲垣紀子さんによるトークを開催しました。
インドのカースト制度の実情や、その中で誇り高く生きる人々について実体験を元に書かれた書籍「インド残酷物語」をはじめ、本作パンフレットでもカーストとインド芸能についてのコラムを寄稿した池亀さんは、「この映画は内容も、配給の経緯も究極の推し活で、タミル映画の成熟度を物語った一本。スター、ヴィジャイのファンクラブのメンバーは下位カーストでチンピラと紙一重ですが、主人公ピーターの居場所であり、推しのスターのために献血などの社会奉仕活動を行っていることも描かれています。カースト差別や、演奏者が上位カーストで占められている古典音楽の闇を感じます」と映画が描く社会背景を語られました。
かつて不可触民と呼ばれたダリトは、その多くがイスラム教や仏教、キリスト教に改宗しているそうで、主人公ピーターの一家もキリスト教に改宗し、息子にきちんとした教育を受けさせるため都会のチェンナイで暮らしていますが、それでも差別が続いていることを示すシーンについて、稲垣さんと池亀さんが解説。実際に女性のムリダンガム奏者が増えても、ダリト出身の奏者はおらず、本作のピーターはまだ夢物語だそうです。
もう一つ池亀さんが注目したのは本作での女性の描き方。ピーターの母テレサやアイヤル師匠の妻アビラーミが夫にはっきりと物を言うのは南インドらしい光景で、夫の稼ぎが少ないから外でスープを売るテレサのような女性もよく見るのだとか。一方、ピーターが想いを寄せたサラは看護師ですが、医師のように社会的地位のある職業は上位カーストが就く一方、看護師は典型的な南インドのクリスチャン女性の仕事であることや、落ち込んだピーターを信頼して新しい旅に送り出す描写についても触れ、恋愛が自然体で描かれているのも魅力と語られました。日常の至るところにある差別に屈することなく、世界中のリズムを感じ、音楽で古典音楽界の高い壁を乗り越えたピーターの物語に何度でも触れたくなる、ぐっと作品の解像度が上がるトークとなりました。
















