イベントレポート


2018.03.31
出張!元町映画館 in KIITO『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』上映&トーク開催しました!

3/24(土)に開催された〈オープンKIITO 2018〉にて、北欧発のアートドキュメンタリー2本をトークイベント付きで出張上映しました。ここでは2本目『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』のイベントの模様をお伝えします。

『オラファー・エリアソン 視覚と知覚』は、デンマークの現代美術家オラファー・エリアソンの活動を追った作品です。主に、巨大な滝のインスタレーション「ザ・ニューヨークシティー・ウォーターフォールズ」の制作過程を映しています。エリアソンのファンなのか、お客さまは熱心な方が多く、上映中にメモを取る姿も見られました。

上映後のトークでお迎えしたのは、近畿大学文化デザイン学科講師の岩城覚久さんとデザインリサーチャーの久慈達也さんです。
岩城さんは感性学、視覚文化学を専門とされています。トークの初めに、「感覚・知覚・認知」の意味の違いについて簡単に説明しながら、本作の邦題に付けられた「視覚と知覚」に感じる複雑な印象についてお話しいただきました。岩城さんならではの切り口が興味深かったです。原題のサブタイトル「Space Is Process」にも触れ、何故「In」ではなく「Is」なのか疑問を投げかけつつ、「空間は過程なんだ」と言い切るエリアソンの意思の強さについても話されました。

久慈さんからは「本」を切り口にオラファー・エリアソンについてお話しいただきました。映画では意図的と思えるほど本については触れられていません。しかし、実はエリアソンは多数の書籍を出版しています。久慈さんは、その理由の一つに本が体験的なメディアであることを指摘し、本はエリアソンが狙っているものを落とし込みやすい媒体なのでは、と考えを述べられました。その他にもパワーポイントで書籍の中身を見せながら、エリアソンが影響を受けたであろうアーティストの話や本作りに関する拘りなどお話しくださいました。

最後は、エリアソンが映画の中でも強調していた「責任」についての話で締めくくられました。要約すると、エリアソンは観客に「責任が伴う形で批評の精神を持ってほしい」と呼びかけています。それを受けてトークでは、書籍『An Encyclopedia』中でエリアソンが「D」に「Democracy」を挙げている事実や、養子を持つ私生活のエピソードなどが紹介されました。エリアソンの「責任」という言葉に対する意識が垣間見えます。オラファー・エリアソンが世界中から注目されるのは、作品だけでなく、こういった発言や生き方にもあるのかもしれません。そういえば、エリアソンが運営するスタジオのユニークなキッチンを紹介した書籍『Studio Olafur Eliasson The Kitchen』の日本語版が発売されたばかりです。

(斉藤)


2018.03.28
出張!元町映画館 in KIITO『YARN 人生を彩る糸』上映&トーク開催しました!

デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)にて3/24(土)に開催されたイベント〈オープンKIITO 2018〉。普段は開放されていないKIITOの様々な場所を公開し、館内のあちこちでワークショップやイベントを行う年に一度の文化祭のようなイベントです。

この〈オープンKIITO 2018〉にて、【出張!元町映画館 in KIITO】と称して、北欧から届いた2本のアートドキュメンタリー映画の上映を行いました。ここでは、1本目の『YARN 人生を彩る糸』上映&トークの様子をレポートします。

『YARN』は【糸】を題材に、【編む】ことを芸術表現として活動する4組のアーティストの活動を追ったドキュメンタリーです。老若男女、幅広いお客さまにお越しいただき、中にはご自身で作られた素敵なニットを身に着けられた方もいらっしゃいました。

『YARN』上映後のトークでお迎えしたゲストは、神戸芸術工科大学ファッションデザイン学科助教授で織作家の渡邊操さん、ユニークな作品を生み出し話題になっているニットユニット〈ニットなアイツ〉のおふたりです。呼び込みをすると、ニットなアイツのおふたりはトレードマークの覆面マスクのようなニットを被っての登場。会場を沸かせていました。

ニットなアイツでデザインを担当する片野坂さんは、映画に登場するアイスランドのアーティスト、ティナの「男性が編み物をしているとそれだけで注目される」という言葉にドキッとしたそうです。相棒であるニッターのガーナさんも、「僕自身、男が編み物をしていることで注目されていると感じる」と認めながらも、それ以上に年齢や性別関係なく編み物を広く楽しんでほしいという思いで活動していると話されます。

実際ニットなアイツのワークショップに参加されるのは老若男女さまざまで、特に若い男性などは「自分が欲しい・着たいものを作りたい」という純粋な興味で参加する方が多く、そこに「男性なのに」「女性だから」というような意図はまったくないそうです。見えない垣根を自然と取り除くようなニットなアイツの活動の魅力を改めて感じました。

渡邊さんは、【織り】で絵を描くような作家活動をされています。映画を観て、「自由度の高い【編み】がうらやましい!」と言われました。縦糸と横糸2本を必要とする織りと違って、編み物は1本の糸ででき、道具がなくても指や腕を使って編めます。できあがったものに伸縮性があるのもうらやましく感じるのだそうです。

そしてみなさん「手づくりならではの均一でないところやムラを楽しんでほしい」と声を揃えます。失敗も味わいのひとつくらいに気軽に楽しんで続けてほしい、その方ができあがったものが絶対に可愛い!とみなさん。

その他それぞれの創作の原点となったエピソードなど、いろんなお話をしていただいた楽しい時間でした。渡邊さん、ニットなアイツのおふたりの今後も活動にもぜひご注目ください!

(mirai)


2018.03.20
「池谷薫ドキュメンタリー塾」から生まれた映像制作サークル【元町プロダクション】の撮影・編集ワークショップ開催しました!

2017年春からスタートした「池谷薫ドキュメンタリー塾」。映画監督の池谷薫さんを講師に、ドキュメンタリー映画制作の裏側や制作者の意図、観かたを学ぶ連続講座です。この春で3期目となるこの講座の受講生たちから「自分でも撮りたい」という声が高まり、そんなメンバーによる映像制作サークル「元町プロダクション」(=モトプロ)が誕生しました。

3/18(日)、モトプロメンバーの中で映像制作未経験の方を中心に、撮影と編集のワークショップを開催しました。まずは、編集で使用するAdobe Premiere Proを各自持参したPCにインストールし、池谷さんが用意したサンプル映像を見ながら作業画面を説明します。実際のウィンドウを見ながらの解説で、映像編集や字幕などを入れる基本の仕組みを学びます。

ソフトの基本的な解説の後は、2人1組になり「自分が撮りたいもの」をお互いにインタビューしながら撮影。どこを背景にするか、どのようなアングルで撮るか?それぞれ思案しながらカメラを動かします。

池谷さんはそれぞれの撮影を見回りつつ声を掛けられますが、「このように撮った方が良い」などは決して言わず、インタビュアーがどうしたいのか、何を聞きたいのか、どう撮りたいのかをしっかり考えるようにと繰り返します。どう問いかけるのか、なぜこの方向からカメラを向けるのか、プロに「なんとなく」というものは無く、すべてに確固たる意味があるのだと改めて感じました。

また、「そこはもっと突っ込んで聞いて」など、インタビューの姿勢も指導されていました。人から何かを聞き出すには、ただ質問を並べるだけでは足りないことがわかります。技術的なことではなく、撮る意志と姿勢をまず伝えるのが池谷さんらしく、それは池谷さんの作品にも表れています。

全員撮影を終え、お昼休憩をはさんで午後からはAdobe Premiere Proを使っての編集作業に入ります。慣れないソフトながら、みなさん真剣にモニターに向き合います。あちこちで「ここはどうしたら…」「音がおかしくて…」など質問が飛び交い、池谷さんと一緒に指導に当たるメンバーは大忙し。

そしてファイル管理の重要性を何度も強調します。どこに何があるかわからないようでは問題なので、フォルダの作り方からファイル名の付け方まで丁寧に指導されました。なんとか全員、編集を終えてファイルの書き出しまで完走。ここまで8時間!お疲れさまでした!!

モトプロは実践的な制作サークルです。編集ソフトの操作に四苦八苦していたメンバーも、遠くない未来に傑作を世に送り出すかもしれません。乞うご期待!です。

(mirai)


2018.03.20
『被ばく牛と生きる』松原保監督、榛葉健プロデューサーによる舞台挨拶開催

東日本大震災の原発事故後、飼育していた牛たちを殺処分することになった畜産農家たちの静かな闘いを描くドキュメンタリー『被ばく牛と生きる』。上映初日の3/17(土)に松原保監督、榛葉健プロデューサーによる舞台挨拶を開催しました。18(日)にも監督による舞台挨拶が行われました。

震災から約7年を迎えての舞台挨拶。作品と福島県の農家の方たちの「いま」を伝える舞台挨拶となりました。

松原監督から、「3/11(日)に震災関連の多くの報道があった。しかし福島県のことが忘れられている。大規模な震災を経験した神戸で上映されて嬉しい」とご挨拶がありました。

榛葉プロデューサーからは「このような上映しづらいテーマでこれだけの方に見ていただいている。これがどれほど尊いことかと感じています」とご挨拶されました。榛葉さんは現在大阪の放送局に勤めていらっしゃいます。「阪神淡路大震災のことも神戸から伝えてきた。でも、2ヶ月後に発生した『地下鉄サリン事件』でメディアに取り上げる機会が減った。福島県の住人は伝えたくても伝える術がない。映画で農家たちのことを伝えることができて嬉しい」とおっしゃいました。

福島県の畜産牛は現在、かなり減っており、去勢手術のために増えることもないようです。監督によると「現在も牧場状態は良いわけではない。できるだけ広い場所で飼っているが、目が行き届かず、知らない間に怪我や事故が起こる。農家さんたちは私たちが思っている以上にギリギリの生活を送っている」とおっしゃいました。

作品の完成にはかなりの時間、労力、お金を費やしたと言います。しかし監督は「『これを世に出すことが一番大切。社会が一つでも動けば良い』そんな想いが作品にあります」とおっしゃいました。

最後に監督は「映画に出てきた農家は一部。福島に住む農家も劇中の人たちと似たような意見を持っている。故郷は人間を形成するアイデンティティの一部。2020年の東京五輪にむけて明るいことに目をむけがちだが、この問題は自分たちで検証する必要がある」と締めくくりました。

『被ばく牛と生きる』は3/30(金)までの公開。

(芋羊甘)


2018.03.20
「レココン 第一回~デヴィッド・リンチの音楽を聴く、レコードコンサート」開催

3/17(土)から始まった特集上映「デヴィッド・リンチの映画」に合わせて3/16(金)に「レココン 第一回~デヴィッド・リンチの音楽を聴く、レコードコンサート」を開催。リンチを全身で浴びてきました。

開催場所はJR元町駅から徒歩約3分の場所にある 「Salle de musique::Phonotheque - 音楽室:フォノテーク」。会場には音楽書籍やレコードがぎっしり。レンタルスペースとしても使用可能な素敵空間です。

本日のプログラムはministudio kobe代表の安井麻人さんによるセトリでした。

まずはデヴィッド・リンチ監督の衝撃のデビュー作『イレイザーヘッド』より「ERASERHEAD」のLPをみんなで視聴。独特の電子音が不気味さを際立たせます。このレココンの良いところは音楽を聴くだけでなく、「音楽を聴きながら、映画の魅力を共有できること」。サントラから聴こえる「赤ちゃんの声」に反応するお客様や「この音はもう終盤?」など、なんとなくリンチを知っている参加者も混じり合うことで会話が生まれます。音楽がコミュニケーションが生む。「音を聴く」本当に奥が深いです。

続いてはアメリカの映画音楽家アンジェロ・バダラメンティによる「TWIN PEAKS」。そう日本でも大ヒットしたテレビドラマ『ツイン・ピークス』のサントラです。放映当時、日本中を席巻した「TWIN PEAKS THEME」で始まりました。ベース音と電子音がミックスし、作品のいびつさを思い出させます。綺麗×不気味、でもさっぱりしている。すごい。このサントラをかけている間も参加者の中で「このテーマ曲ってテレビ番組でも盛り上げるシーンとかでよく使われていたよね。聴く度に思い出すわ」など、作品のことを思い返すお客様もいらっしゃいました。

大画面で、今しか観ることのできない鬼才の作品。音楽にも注目してください。リンチにまみれてきました。

特集上映「デヴィッド・リンチの映画」は3/30(金)まで。
デヴィッド・リンチ監督が自らの口で創作について語るドキュメンタリー映画『デヴィッド・リンチ:アートライフ』は3/24から公開。

(芋羊甘)


2018.03.20
3/16(金)首藤凛監督スペシャルプログラム&トーク開催!

『なっちゃんはまだ新宿』監督の首藤凛さんにお越しいただき、監督作3つの上映後トークイベントを開催しました。

首藤さんは今度大学を卒業して社会人になる20代前半の若い女性監督です。
今回上映した短編『さよなら沢田先生』は大学1年生の時に早稲田大学映画研究会に参加して撮った第1作、中編『また一緒に寝ようね』は同じく大学3年生の時に撮られました。
そして若手映画監督の登竜門である音楽と映画の融合を目指した企画「MOOSIC LAB」の2017年度において、準グランプリ、ベストミュージシャン賞、女優賞を獲得した最新作『なっちゃんはまだ新宿』合計2時間30分!

まずは首藤さんへ支配人の林が上映作品についてお聞きしました。

林:3作品には同じ女優さん、池田夏海さんを主演に抜擢されてますが彼女の魅力は?
首藤:池田さんとは中高時代の友人なんです。池田さんが就職する時だったので『なっちゃん』の時に「最後に出てよ、これに出ても二階堂ふみにはなれないけども」と言ったら「なれなくていいからこれに出たい」と。彼女は最初の『沢田先生』から比べて端的に劣化してるんです。10kgも太って潑刺さもなくなって。芸能活動してるわけではないから容姿に出るんです(そこが魅力というわけです)。

これを読んだ人は何てシニカルな監督なんだろうと思うかもしれませんが、真摯で率直な上品さが首藤さんからは否定し難く滲み出ていました。

林:男性の役名が常に苗字で呼ばれているのは何故なんですか?
首藤:初めて言われましたけど、あっ、そういえばそうですね。男性を描けるところまで自分が行ってないのかも。普段わたしは苗字では呼ばないです。
男が描ける女性監督は売れますよね、西川美和さんとか。男性主人公で撮ってみたいとは思います。

お客様からもざっくばらんに質問が飛んでいました。
客:今日上映した3作品の中で、主人公は食べ物に感情をぶつけていましたが?
首藤:ホントですね。全然気づいてなかったです、無意識。何か美味しそうな料理が出てる映画は好きじゃないですね。
母が度を越して料理が下手なのが関係してるかもしれません。

『なっちゃん』に出演しているバンドのPOLTAのお二人のこともたくさん話されましたが紙幅の都合で割愛します。

最後にお客様とのQ&Aを少し紹介します。
Q:テロップの字が大きいのは何故か?
A:パソコンで編集してて大きいとカッコ良いから。劇場で上映されるとは思ってなかった。
Q:なっちゃんはどういう存在?
A:モデルの子がいて嫌いなんだけど時には好きの感情がある。すごく気になることが気にならなくなること、自分勝手。

首藤監督のお話を聞いていると、深く考えるヒントを頂いているようでした。
正確には上記の書き言葉のままではないのですがなるべく忠実に再現しました。

これからどのような映像作品を撮っていかれるのか楽しみです。
皆さま、「首藤凛」の名前を覚えておいてください!

(高橋)


2018.03.20
『YARN 人生を彩る糸』〈ニットなアイツ〉のニットカフェ@カフェクリュ開催しました!

3/17(土)『YARN 人生を彩る糸』上映後、元町映画館のまウラにあるカフェクリュにてニットカフェを開催しました。講師を務めてくださったのは、覆面マスクのようなニット帽がトレードマーク、ユニークな作品を生み出してあちこちで話題になっている男性2人のユニット〈ニットなアイツ〉のガーナ先生です。

『YARN 人生を彩る糸』は、観ると編み物をしたことが無いような人(私のことです)でも「何か編んでみたい…!」という気持ちがムクムクと沸き上がる映画です。抑えきれないこの気持ちをカタチにしたくて、初心者でも参加できるワークショップをニットなアイツさんにお願いしました。

今回のニットカフェで作ったのは、ニットなアイツさんの代表的な作品でもある「アイツくんコースター(兼アクリルたわし)」です。覆面マスクのような顔があり、選ぶ糸の色や編む人によって様々な表情を見せてくれます。

映画鑑賞後カフェクリュに移動すると、テーブルの一角がアイツくんだらけに!参加者のみなさんから歓声が上がります。見る人を笑顔にするだけでなく、誰かに話したくなるようなアイツくんたち。人と人を繋げるコミュニケーションツールとして編み物を活かしたいという、ニットなアイツさんの思いが込められています。

参加者は思い思いの色の糸を選び、ガーナ先生の指導で編み始めます。経験者もいますが、私のような初心者でもちゃんとついていけるようにわかりやすく丁寧に教えてくれます。単純作業の繰り返しに入ると、褒め上手なガーナ先生の言葉にも乗せられだんだんコツも掴めてきて楽しさが加速。形ができてくると自分の編んでいるものがどんどん可愛くなってきます。編み物って、楽しい!

ベースが編み上がるとそれぞれ目と口の周りを好きな色の糸でかがって完成。どの子もイイ表情をしています。カフェクリュ店主の金田さんも見ているだけでは我慢できなくなったのか途中から参戦。できあがったアイツくんをブローチにしてバッグやストールに合わせたいと満喫していました。

編み物そのものの楽しさ、ハンドメイドの楽しさ、そしてみんなで一緒に作ることの楽しさを感じられた時間でした。『YARN 人生を彩る糸』は3/23(金)までの上映です。編み物はもちろん、ハンドメイドや表現に興味のある方はぜひご覧ください!

(mirai)


2018.03.16
「池谷薫ドキュメンタリー塾~ガイダンス篇~」開催しました!

ドキュメンタリーは好きだけどイマイチ観かたがわからない――。そんな声にお応えして、元町映画館ではドキュメンタリー映画について学ぶ「池谷薫ドキュメンタリー塾」を昨年から開催しています。そのお試し回として、ガイダンス篇を3/15(木)に開催しました。

講師は『蟻の兵隊』『ルンタ』などの作品で知られる映画監督の池谷薫さん。講義では、毎回池谷さんが制作した作品(映画やTV番組)を教材としながら進めていきます。今回は池谷さんの自己紹介がてら、初めてディレクターを務めた作品から、その後の映画『ルンタ』を制作するきっかけを作ったダライ・ラマに関するTBS報道特集、そして池谷さんの作品づくりに大きな変化を与えた中国の一人っ子政策に迫ったNHKスペシャル(の断片)を鑑賞しました。講義の様子をお伝えするために、ここでは特に印象に残ったNHKスペシャルのエピソードをご紹介します。

池谷さんはこのNHKスペシャルを撮影する中で衝撃的なシーンに遭遇します。それは2人目を身籠った女性に対して行われる「強制中絶」です。カメラを回し続けて良いのか逡巡したそうですが、当時の池谷さんは頭が真っ白になってしまい、とりあえずその顛末はカメラに収められました。で、その映像を日本に持って帰った際に上司に言われた一言が「撮れすぎている」だったそうです。なぜ撮れすぎたのか。それは、つまり中国のプロパガンダに乗せらた可能性を示していました。一人っ子政策を徹底して行なっているという諸外国へのアピールの一役を担わされたということです。そう考えると、その女性への強制中絶は、カメラが入ることで新たに生み出されてしまった現実なのかもしれない。「カメラの暴力性」を思い知らされ、作風を見直すきっかけにもなった、とのことでした。

とまあ、このように作品の裏側にももう1つのドラマがあります。「池谷薫ドキュメンタリー塾」は、今回挙げた例のような「制作者ならではの思考」を通してドキュメンタリー映画を学べるところが大きな特徴です。作り手の苦悩や葛藤、喜びを知ることで、ドキュメンタリーがより深く楽しめること間違いありません。少しでも興味が湧いた方はぜひHPをご覧いただきたいと思います。本講義は4/5(木)からです。→

(斉藤)


2018.03.13
『生きる街』榊英雄監督&秋山命さん舞台挨拶開催しました!

『生きる街』上映2週目に入った3/11(日)、榊英雄監督と原案・企画プロデュースの秋山命さんをお迎えして、上映後に舞台挨拶を行いました。奇しくも東日本大震災から7年を迎えた日でした。

映画は宮城県石巻市を舞台に、父親が津波に流された家族の生きる日々を描いています。震災直後に石巻までダンプで行ってボランティア活動をし、被災地の人たちと密接な関係を築いて現地にも事業所を作った名古屋のある運送会社の社長の、震災を風化させないためにも何かを作りたいという思いが企画のきっかけでした。

秋山さんがその企画を榊監督に持ちかけたところ、東京でしか震災を経験していない自分にはとても踏み込めない題材だと断られました。とにかく一緒に行こうと秋山さんに引っ張っていかれた石巻で見た光景に圧倒され、やっぱり自分には無理だと断った榊監督でしたが、ご自身の故郷の五島列島でひとり暮らす母親のことを思ったとき、何があっても踏ん張って生きながら家族が元気で幸せであることを祈っている姿が浮かび、家族の話ならできるかもしれないと思い立ち引き受けたのだそうです。

「3.11という意味ある日に、23年前に大震災を体験した神戸に来られたことが有難い」おふたりはそう言ってくださいました。『生きる街』を初めて観たとき、《日常》の持つ力を何より強く感じさせられました。自分の意志とは関係なく連綿と続く日常の持つ暴力性、そして逆に、日常にしか傷を乗り越えさせる力はないのだと。そう感じたのは私自身が阪神淡路大震災を経験したからにほかならず、恐怖や喪失感ではなくそのことを思い出させてくれた映画は本作が初めてでした。神戸の人だからこそ感じ取れるものがこの映画にはあり、神戸の人にこそ観ていただきたいと強く思っています。

仕事があり今日の登壇は叶わなかった主演の夏木マリさんからもご挨拶動画が届けられ、来場されたお客さまへメッセージをいただきました。嬉しいサプライズにお客さまも大喜びでした。

『生きる街』は3/16(金)までの上映です。観終えたとき、このタイトルがとても心に響きます。

(mirai)


2018.03.06
SILENT FILM LIVE#01「エジソンの映画史1895-1908」&初期映画入門講座開催しました!

3/3(土)元町映画館2Fシアタールームにて、生演奏付きのサイレント映画上映会「SILENT FILM LIVE#01 エジソンの映画史1895-1908」を開催しました。映画が生まれたばかりのこの時代をより深く知ることができる「初期映画入門講座」も同時に開催。解説と講座講師にプラネット・プラス・ワン代表の富岡邦彦さん、ピアノの生演奏は鳥飼りょうさんです。

「動く写真」である映画が生まれてまだ120年あまり。現在と10年前の映画を比べても驚くような変化はありませんが、1895~1908年の13年間は映画がすごい速度で進化し大きく変わった時代です。そんな当時の人たちが「何を見ていた」のか、「何を面白がっていた」のかを知ってほしいと富岡さんは話します。

1927年の〈トーキー〉誕生まで、映画には音がありませんでした。では、上映も無音でされていたのでしょうか?「リュミエールの時代から生演奏付きの上映でした」と鳥飼さん。とはいえ各作品のために書かれたスコア(譜面)なんてものは存在せず、演奏者が即興で音楽をつけていたのだそうです。鳥飼さんも同様に即興で弾かれると聞き、期待が膨らみます。

人気舞台のキスシーンを再現した『メイ・アーウィンの接吻』(1896年)から、“映画の父”と称されるD.W.グリフィスの『ドリーの冒険』(1908年)まで、13作品を鑑賞しました。思わず笑ってしまうユーモラスなものやハラハラしながら見入ってしまうもの、特殊撮影を駆使したものまで、実に多様!当時の風俗や社会状況も垣間見えました。

そして生演奏の魅力も存分に堪能できました。「監督」と言っても「演出する」という概念がまだ無かった時代、その映像に感情などを色付けていたのは音楽だったのではないでしょうか。耳なじみのあるメロディも入れつつ、時に映像の後ろに控え、時に映像を引っ張る強さを見せ、絶妙に観客の感情を揺さぶる演出力を強く感じました。聞いたことある…と思いきやスーダラ節だった時には思わず吹き出してしまいました!

上映の後は休憩をはさみ、初期映画入門講座を実施しました。先ほど観た作品を例に挙げ、さらに参照作品をいくつか鑑賞しつつ映画の誕生から歴史を紐解いていきました。映画を観るということは世界の多様性を知るということ、自分とは異なる価値観に触れること。「同じ映画を観ていても年齢や個々人の背景により笑う部分が異なったりする。映画館という“社会”の中で他者と一緒に観ることが《映画を観ること》だ」という富岡さんの言葉に深く感銘を受けました。

(mirai)

更新情報

2018.12.08
トピックス上映作品スケジュール前売り券情報更新しました

2018.12.04
イベントレポート更新しました

2018.11.30
トピックス上映作品スケジュール前売り券情報更新しました

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